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結婚、離婚、子供の独立、相続、転勤…このようなさまざまな事情でマンション売却を検討する人は多くいます。
しかし、マンションを売却するという経験は人生でそう何度もあるものではありません。あなたも何から考えれば良いか分からず、手探りで情報を集めているのではないでしょうか。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- マンションを売却するには何から始めれば良いんだろう?
- マンションの売却はどこにお願いすればスムーズ?
- 引き渡しまでどんな流れで進めていくんだろう?
人が住んで中古になったマンションとはいえ、売却で動く金額は数百万円~数千万円と高額。当然、「失敗したくない」「損したくない」という気持ちがあるでしょう。
その不安を安心に変えられるよう、この記事ではマンションを売る前に知っておくべき情報をまとめました。高く売るために売主ができる対策も紹介!
マンションを売るというのは、新しい生活が始まるタイミングです。この記事が中古マンション売却の役に立って、その後の生活がワクワクするものになれば幸いです。
この記事の目次
はじめに:あなたに合ったマンションの売却方法を確認しよう
マンションの売り方はひとつではありません。
大きく分けると、
- 不動産会社の仲介によって個人の買主を探す方法
- 不動産会社が買い取る方法
- 売却後もローンの返済を継続する任意売却という方法
があります。
一般的な売却方法は、ひとつめの「不動産会社による仲介」です。
これら3つのなかではもっとも高く売れる売却方法なので、よほどの事情がない限りは「仲介」を選択しましょう。
ただ、急な転勤など急ぎの売却であれば「不動産会社による買取」、月々の住宅ローンを返済できない状況(競売にかけられる可能性がある)なら「任意売却」が向いています。
あなたがマンションを売却する理由や目的に合わせて、売却手段を選びましょう。
あなたの状況 | 向いている売却方法 |
---|---|
1ヶ月以内に確実に売却したい | 不動産会社による買取 |
毎月の住宅ローンを返済できない | 任意売却 |
上記以外 (このケースが一番多い) |
不動産会社の仲介による売却 ※本記事の次章へ移動 |
この記事では、一般的な「不動産会社の仲介による売却」にフォーカスをあてて、流れや注意点などを説明していきます。
マンション売却の全体の流れ
マンション売却の流れはいたってシンプルで、売却の権利を持っている人であれば誰でもかんたんに売却できます。
あなたがメインで動くのは、はじめの「不動産会社選び・仲介依頼」のみです。
不動産会社に仲介を依頼しさえすれば、そのあとの手順は不動産会社が買主探しや売買契約を主導してくれます。
※詳しい売却の流れは、本記事の章『【詳細を知りたい人向け】マンション売却の具体的な手順・流れ(全13ステップ)』で説明しています。かなり詳細に説明していますので、流れを具体的にイメージしたい人におすすめです。
「むずかしいことは考えたくない」
「できるだけ手間をかけずに売却したい」
という人は、さっそく不動産会社へマンションの査定依頼をしましょう。
そうすれば、売却に必要なことは不動産会社がメインで進み、売主がすべきことは不動産会社が教えてくれます。
自分でいろいろ調べるのは正直しんどいし、依頼するだけで話が進むならその方が楽チンだなぁ~
プロに任せれば、あとは買主が現れるのを待つだけ。もし心配なら、後章の「不動産会社の選び方」だけチェックすると良いでござる。
「慎重にことを進めたい」
「マンションをできるだけ高く売るために、多少面倒でもできることはやりたい」
という人は、この記事を読み進めていただければお役に立てるかと思います。
マンション売却にかかる期間・スケジュール
次に知っておきたいこととして、マンションの売却には時間がかかるということです。
マンション売却の計画を立てる上では『マンション査定から引渡しまで、すべての手順で5~6ヶ月程度かかる』と考えておくと良いでしょう。
各ステップでかかる時間は、ざっくりですが下記を目安にしてください。
売却までの流れ・手順 | 必要な期間 |
---|---|
1. 不動産会社への査定依頼 | 1週間 |
2. 媒介系契約を結ぶ | 査定から1週間 |
3. 売り出し・内覧 | 3ヶ月前後 |
4. 申込と契約 | 1週間 |
5. 買主側の住宅ローン審査待ち | 2週間~1ヶ月 |
6. マンションの引渡し | ローン審査から1~2週間 |
なお、売却活動にかかる時間は、マンション自体やタイミングによって大きく変わります。
あなたのマンションを売りに出した時、すんなり買主が見つかる可能性があれば、買主探しに苦戦する可能性もあります。
半年ほど見て住み替え等の計画を立てることをおすすめします。
マンション売却の土台!不動産会社の選び方
不動産会社選びは、マンション売却の成功を左右するくらい重要。
なぜなら、不動産会社の働きひとつで、マンション売却のスピードや価格が変わってくるためです。
不動産会社ならどこでも良いと思ってた…
マンション売却は不動産会社主導で進むからね。購入検討者を探すのも、内覧を対応するのも、価格交渉をするのも不動産会社。力量が問われるでござる。
「これから数ヶ月間、信頼して長く付き合える不動産会社」を見つけるため、複数の不動産会社をしっかり比較することが大切です。
しかし、安易に査定価格の高さ・低さだけで不動産会社の良し悪しを判断してはいけません。
この章では、不動産会社ぶときの見極めポイントを紹介します。
見極め1.査定価格に根拠があるかどうか
まず、複数の不動産会社にマンションの査定を依頼し、提示された査定価格の根拠を聞きましょう。
査定価格は各不動産会社が調べた「売れるであろう価格」であり、会社によって差が出てきます。
他社より明らかに高い査定価格を出している場合、
- ちゃんと理由があって「その価格で売れる!」と考えている
- 査定価格に根拠はなく、仲介の契約を取るために相場より高い価格を提示している
のどちらかにあてはまるため、根拠は大事になってきます。
査定価格に納得できる根拠がなければ、売主よりも自社利益を優先する不動産会社と言えるので注意してください。
見極め2.迅速さ・丁寧さ・正確さがあるかどうか
マンションの査定を依頼したときに、窓口となる営業マンの対応の良さをチェックしましょう。
なぜなら、営業マンのあなたへの対応は、そのまま購入検討者への対応方法になるからです。迅速さ・丁寧さ・正確さを欠く対応は、購入検討者の信頼を得られず売却の機会を逃しかねません。
見極めるタイミングは「査定に関する返信」。
査定には机上査定と訪問査定の2種類があり、机上査定は電話・メールのみでのやりとりになります。机上査定を依頼して1~2営業日以内に返信がなければ遅いと言えます。
電話の話し方からも営業マンの丁寧さをうかがうことができるでしょう。
見極め3.直近のマンション販売実績があるかどうか
マンションを査定した不動産会社に、ここ3ヶ月くらいの間にそのエリアでマンションを売却した実績があるかどうかを聞きましょう。
なぜなら、不動産会社によって持っているノウハウや抱えている顧客が異なるためです。
マンションを売りたいのであれば、
- マンションの売却ノウハウを持っている
- マンションを購入したい人から相談を受けている
というような不動産会社だとスムーズ。その判断のために、マンションの販売実績のヒアリングが有効なのです。
数々の売却実績がある会社は、そのエリアの周辺施設や交通の便などの情報に詳しく、質の高い営業トークで売買成立の可能性が高まります。
マンション売却前に知っておくべき8つの注意点
初めての売却だとこんなことを考えてしまいませんか?
- 高い査定価格を出してくれた不動産会社に仲介を依頼しよう
- 高く売るために事前にリフォームしておこう
- 実は壊れている部分があるけど、売れないと困るから黙っておこう
実はこれらの考え方は、間違いです。
マンションを売却するにあたり、売主のみなさんは次の8つの注意点を知っておきましょう。損せずトラブルなく売却を進めるためには、すべて必要な情報です。
- 住み替えの場合は新居探しを平行しておこなうこと
- 高く売りたいなら仲介、急ぎで売りたいなら買取を選ぶこと
- 複数の不動産会社に査定を依頼すること
- 査定価格の高さだけで不動産会社を選ばないこと
- 安易にリフォーム・リノベーションをしないこと
- 売主は「瑕疵担保責任」を知っておくこと
- マンションの売却理由を隠さないこと
- マンション売却に関する資料や領収書は保管しておくこと
2つ目以降は、マンションを売りたいと思っている人全員にかかわる内容なので、確認しておきましょう。
マンションの売却ではほかにも注意したい点があります。もっと詳しく知りたい人は下記記事もご覧ください。
失敗したくない!マンションを高く売る5つのコツ・対策
大切な資産であるマンションを売却するなら、おそらく売主全員が『できるだけ高く売りたい!』と思うでしょう。
ここをご覧になっている人のなかには、「マンション売却 高く」「マンション 高く売る」といったキーワードで検索した人もいるかもしれませんね。
結論を伝えると、マンションを高く売るには次の5つのポイントを押さえてください。
-
売却にかける時間に余裕を持つ
(難易度★★★☆☆) -
効果的な媒介契約を選ぶ
(難易度★★☆☆☆) -
不動産会社に任せきりにしない
(難易度★★☆☆☆) -
内覧前に掃除をする
(難易度★☆☆☆☆) -
インスペクションをおこなう
(難易度★★★★★)
それぞれ要点をかんたんに紹介します。
対策1.売却にかける時間に余裕を持つ(難易度★★★☆☆)
不動産は「売り急ぎ」と言って、焦って早く売ろうとすると価格が安くなってしまうという性質があります。
マンションを高く売りたいなら、最低でも3ヶ月間、できれば半年程度の余裕をもって取り組むようにして下さい。
時間の確保がポイントです。
対策2.効果的な媒介契約を選ぶ(難易度★★☆☆☆)
マンションの流れの章で伝えたとおり、売却の仲介を依頼するためには不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約には専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3種類があり、どれを選ぶかによって「不動産会社の動き」が変わってきます。
「これを選べば高く売れる!」という絶対的なものではないですが、選択の基準をお話します。
媒介契約と向いている人
- 【専属専任媒介契約】:自分で買主を見つける予定がない人(不動産会社にすべて任せる人)
- 【専任媒介契約】:自分でも買主を探す人(不動産会社に仲介を依頼しつつ、親せきや知人にも声をかける人)
- 【一般媒介契約】:エリア・立地・築年数などの条件が良いマンション(都心で築浅など)を売る人
上記にはちゃんと根拠があります。それぞれの理由を理解するために媒介契約の特徴をお話ししましょう。
細かいことは気にしないという人は、読み飛ばしても大丈夫です。(次の対策を読む:対策3.不動産会社に任せきりにしない)
なお、自分が上記3パターンのどれに該当するか分からない場合は、「専任媒介契約」を選んでおくと無難です。
また、宅地建物取引業法上、契約期間は最大で3ヶ月と決まっていますので、不動産会社に満足できなければ他社に切り替えることも可能です。
一般媒介だと売却活動に注力してもらいにくい
細かい違いは色々ありますが、もっとも大きな違いは「仲介を依頼できる(媒介契約を結べる)不動産会社の数」です。
一般媒介契約は複数の不動産会社にマンション売却を依頼できますが、専属専任媒介契約・専任媒介契約は1社のみです。
この違いを見て、「複数の不動産会社に仲介を依頼できる一般媒介契約の方が、買主が見つかりやすいのでは?」と思った人もいるかもしれません。自由度も高そうですよね。
この考え方は一部正しいですが、間違っているとも言えます。都心で築浅など好条件のマンションでない限り、専任媒介契約・専属専任媒介契約(以下、専任系媒介契約)のほうがおすすめです。
なぜなら、専任系媒介契約の方が広告費用や人員の投下をしてくれるからです。
一般媒介契約の場合、複数の不動産会社で売買契約の競争をすることになります。広告費をかけて売却活動をして、もし他社がマンション売買を成立させてしまったらどうでしょうか。不動産会社としては、それまでに投下した広告費用や人件費が無駄になります。さらに、仲介の報酬である仲介手数料が1円も入りません。
このような事情から、一般媒介契約の不動産会社は、広告費用も人員もあまり割けないしやる気が上がらない傾向があるのです。
ただし、例外はあります。
「都心の人気エリアで駅近の築浅マンション」などすぐに購入希望者が現れるような好条件であれば、不動産会社の競争原理が有効にはたらきます。そのため、一般媒介契約を結ぶことでより高額での売却を期待できます。
専属専任媒介と専任媒介の判断は「自分で買主を見つけるかどうか」
さきの説明で、基本的には専属専任媒介契約・専任媒介契約が良い理由が分かったと思います。
では、専属専任媒介契約と専任媒介契約の違いは何なのでしょうか。
違いは次の3つあります。
- 売却活動の報告頻度
- レインズへの登録タイミング
- 自己発見取引の可否
これらの違いから、向き不向きが生じてくるのです。
違い1.売却活動の報告頻度
ひとつめの違いは、「売却活動の報告頻度」です。
専属専任媒介と専任媒介の場合、不動産会社には売主への報告義務があります。具体的には、広告の反響状況や検討者の状況を営業マンから報告されます。その報告頻度は、宅地建物取引業法(第三十四条の二)で以下のように決まっています。
- 専属専任媒介契約:1週間に1回以上、売主へ売却状況を報告する
- 専任媒介契約:2週間に1回以上、売主へ売却状況を報告する
当然、報告頻度の高い専属専任媒介契約のほうが、不動産会社の活動状況がよくわかります。売り出し価格を改定するかどうか等の判断も早々にできます。
違い2.レインズへの登録タイミング
ふたつめの違いは、「レインズへの登録タイミング」です。
専属専任媒介と専任媒介の場合、不動産会社にはレインズに登録する義務があります。レインズとは、全国の不動産会社が閲覧・利用できるネットワークシステムです。レインズに登録することで、ほかの不動産会社と売却物件の情報を共有することができます。その登録頻度は以下のように決まっています。
- 専属専任媒介契約:売却する不動産情報を5日以内にレインズへ登録する
- 専任媒介契約:売却する不動産情報を7日以内にレインズへ登録する
たった2日の差なので、「専属専任媒介契約と専任媒介契約のどちらが良いか」という点では気にしなくてよい違いです。
違い3.自己発見取引の可否
みっつめの違いは、「自己発見取引の可否」です。
自己発見取引とは、売主が自分で買主を見つけて売買契約をすることです。自己発見取引ができるかできないかは、以下のように決まっています。
- 専属専任媒介契約:自己発見取引はできない。自分で見つけたとしても不動産会社を通して契約しなければならない。
- 専任媒介契約:自己発見取引はできる。
たとえば、親族や知り合いからマンションを買いたいという申し出があった場合を考えてみましょう。
専任媒介契約であれば、当事者間で売買契約をおこなうことができます。不動産会社は仲介していないので、仲介手数料を支払う必要はありません。
一方、専属専任媒介契約であれば、当事者だけでマンション売買はできません。不動産会社による仲介を通さなくてはなりません。つまり、仲介手数料の支払いは発生します。
以上3つの違いを根拠として、下記のことが言えるのです。
媒介契約と向いている人
- 【専属専任媒介契約】:自分で買主を見つける予定がない人(不動産会社にすべて任せる人)
- 【専任媒介契約】:自分でも買主を探す人(不動産会社に仲介を依頼しつつ、親せきや知人にも声をかける人)
- 【一般媒介契約】:エリア・立地・築年数などの条件が良いマンション(都心で築浅など)を売る人
3種類の媒介契約の特徴まとめ
紹介した媒介契約の特徴や違いについて、かんたんに分かるように比較表としてまとめました。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の会社との媒介契約 | ×(1社のみ) | ×(1社のみ) | ○ |
売主が自分で見つけた買主との直接取引 | ×(自分で見つけたとしても不動産会社を通して契約しなければならない) |
○(できるが、使った広告費を負担しなければならない) |
○(媒介契約を解除できる。費用負担はなし。) |
レインズへの登録 | 5日以内 | 7日以内 | 任意(登録義務なし) |
売主への業務報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 任意(報告義務なし) |
契約有効期間 | 最大3ヶ月 | 最大3ヶ月 | 規定なし(3ヶ月が目安) |
1点、「レインズへの登録」について補足します。
一般媒介契約では「レインズ」への登録は任意となっていますが、登録すること自体は可能です。不動産会社に登録義務がないというだけです。
レインズは一定の資格を満たす不動産会社しか利用できません。つまり、一般人である売主が自分で売出物件をレインズに登録することはできないのです。一般媒介契約でレインズへの登録を希望する場合は、媒介契約した不動産会社にその旨を伝えましょう。
レインズ登録を断ることは売主に不信感を与えることになるので、そうそう断られることはないかと思います。ただ、分譲マンションを相場より破格の値段で売り出すなど、値崩れを引き起こしそうな物件だと、レインズへの登録は積極的になってもらえないかもしれません。
対策3.不動産会社に任せきりにしない(難易度★★☆☆☆)
慣れないマンション売買を安全かつスムーズにおこなうために、プロの不動産会社に仲介を依頼します。
それでも任せっきりにしてはいけません。
マンション売却にあたり知らない用語がたくさん出てくるでしょう。普段は接することのない法律の話など、むずかしいことは全部不動産会社に任せたくなるかもしれません。
しかし、不動産会社が説明したことを売主であるあなたが理解できていなければ、トラブルにつながる可能性はあります。
十分なコミュニケーションを取っていきましょう。
営業マンとこまめに連絡する
内覧したいという購入希望者をつれてくるのは不動産会社の営業マンです。不動産会社からの報告を待つのではなく、売主からもマメに連絡を取ることで緊張感が生まれます。
1週間に1度程度は、「売却活動の状況はどうですか?」と聞くことをおすすめします。
こまめに連絡をとり、営業マンの意識からあなたの物件を離さないようにすることが高く売るためのポイントです。
広告に口を挟む
さらに、必ず自分のマンションがどのように広告されているのがチェックするようにして下さい。
自分のマンションが、ほかの物件広告よりも情報が充実していれば問題ありません。しかし、シンプルな情報しか載っていなければ、購入希望者が見たときに興味を持ってもらえない可能性があります。
情報の充実させるため、「●●の写真を提供するので載せてもらえますか?」などと伝えましょう。
また、「広いベランダが魅力!3LDKの駅近マンション」といったマンションの特徴をあらわすキャッチコピーも重要です。実際に住んでいた売主にしか分からない魅力があるはずなので、営業マン任せではなく売主も一緒に考えましょう。
対策4.内覧前に掃除をする(難易度★☆☆☆☆)
マンション売却の成約率は、買主が内覧をしたときの印象によって大きく変わります。そのため、掃除などを含め出迎えの準備をしっかりおこないましょう。
具体的には、以下の出迎え準備をおこないます。
- 室内の掃除や換気
- スリッパの準備など
- 出迎えと帰宅時の挨拶
- 質問を受けたときの返答
内覧の対応で大切なのは、清潔さを保つことです。いくら立地条件や設備が整っていても、汚れた部屋は内覧する人の印象を著しく悪くします。内覧に来てもらった購入希望者に住みたいと思ってもらえるよう、内覧のたびに室内の清掃はおこないましょう。
水回りの掃除をするだけでも印象は良くなります。
また、内覧希望者は間取りや設備についてはあらかじめ情報を得ています。良い点をアピールする必要はなく、聞かれたことに丁寧に対応する形を取りましょう。
挨拶もしっかりとおこないましょう。あくまで内覧者は「お客様」という意識をもつことが大事です。
なお、掃除や準備の話以前に内覧者数が少ない状態であれば、内覧数を増やす対策が必要です。月3~4件に満たない場合には、内覧数を増やすための対策が必要です。
対策5.ホームインスペクションをおこなう(難易度★★★★★)
ホームインスペクションとは建物状況調査のことです。建築士や住宅診断士などの専門家が、住宅の劣化の状況や工事の不備などがないかを診断します。
インスペクションをすることで、以下のようなことが分かります。
- あと何年くらい住み続けることができるのか
- いつごろ、どのあたりの改修が必要となり、その費用はどのくらいなのか
- 欠陥住宅ではないか
2017年3月に全国宅地建物取引業協会連合会がおこなった「土地・住宅に関する消費者アンケート調査」によると、インスペクションを利用した人のうち64.3%が希望価格で売れたと回答しています。
インスペクションに合格すると、「構造上で主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」に問題がない中古マンションだというお墨付きをもらうことができます。つまり、買主が安心してマンションを購入することができ、それが高く売れることに繋がっていると考えられます。
以上が、高く売るためにすべきことです。
用意しておくべき必要書類
マンションを売却するにあたって、売主が用意する書類がいくつかあります。必要書類をそろえるタイミングは、不動産会社と媒介契約をしてからでも大丈夫です。
ただ、あらかじめ用意しておくとスムーズに売却活動を進めることができるため、時間に余裕があれば早めに揃えましょう。
この章では、査定から売買契約に至るまでに必要な書類を時系列で説明していきます。
マンションの査定を依頼するときの必要書類
不動産会社にマンションの査定を依頼するときは、書類が必要なケースと不要なケースがあります。
机上査定の場合は、用意すべき書類はありません。
訪問査定の場合は、下記の書類を揃えておくと話がスムーズです。
訪問査定のときに用意する書類
- 権利証もしくは登記識別情報
- マンションを購入した時の契約書、重要事項説明書
- マンションを購入した時のパンフレット
- 住宅ローン残債がある場合は返済予定表(償還予定表)
- 管理費や修繕積立金の額がわかる書類
- 固定資産税の額がわかる書類
ただし、不動産会社によって必要書類は変わるため、査定依頼先の会社に必要書類を確認しましょう。
不動産会社と媒介契約を結ぶときの必要書類
不動産会社と媒介契約を結ぶときは、下記3点セットがあれば大丈夫です。
- 身分証明書
- 登記済権利書(もしくは登記識別情報通知書)
- 印鑑
さらに、
- マンション購入時の販売パンフレット
- 固定資産税の納税通知書
- マンション管理規約
- マンション購入時の契約書・重要事項説明書
- リフォーム時の図面
などの書類があれば、不動産会社が募集広告を作成するために必要な情報を提供できてスムーズです。
マンション売買契約を結ぶときの必要書類
買主が見つかりマンション売買契約を結ぶときは、下記の書類が必要です。
- 登記済証または登記識別情報
- 実印、印鑑証明書
- マンション管理規約・細則
- 建築確認通知書(検査済証)
- 固定資産税の納税通知書
- 本人確認書類、建物図面
これらの書類は、売買契約の直前ではなく早めに用意しておきましょう。できれば購入希望者が現れる前から、どんなに遅くても売買契約日の1週間以上前から準備を始めてください。
必要書類は取り寄せが必要なものも多いです。取り寄せる場合は数日から1週間ほどかかります。
購入希望者から要望を受けてから書類を準備する姿勢では、売却のチャンスを逃す恐れがあります。
不動産会社に事前確認して、早め早めの準備を心がけましょう。
必要書類を入手できる場所や気をつけたいポイントなど、以下の記事で解説しています。
売却にかかる仲介手数料やその他諸費用
マンションを売却すると、その代金を手に入れることができます。一方で、仲介手数料など売却のための諸費用もかかります。
今後の資金計画のためにも、収支を把握しておきましょう。
費用項目 | 金額 | 支払いタイミング |
---|---|---|
仲介手数料 | 売買金額の3%~5%程度 | 売買契約時に半金、引き渡し時に半金支払い |
印紙税 | 200円~60,000円 | 売買契約時 |
費用項目 | 金額 | 支払いタイミング |
---|---|---|
抵当権抹消登記費用(住宅ローンがまだ残ってる場合) | 1,000円×物件数 | マンション引き渡し時 |
司法書士への登記手数料(司法書士に依頼する場合) | 1万円程度 | マンション引き渡し時 |
譲渡所得税 | 物件によって異なる | 売却した年の翌年の確定申告期間 |
リフォーム・クリーニング費用 | 5万円程度 | マンション売却活動の開始前・もしくは売買契約後 |
住宅ローンの繰り上げ返済手数料 | 1万円~6万円程 | マンション引き渡し時 |
この記事では、仲介でマンションを売却する限り必ず払うことになる「仲介手数料」と「印紙税」について紹介します。
手数料や費用の全体像を知りたい場合は、『【保存版】マンション売却でかかる手数料・費用を一挙紹介!』の記事をご覧ください。
不動産会社に支払う「仲介手数料」
マンション売却にかかる諸費用のなかでも、いちばん高額なのは「仲介手数料」です。仲介をしてくれた不動産会社への報酬という位置づけです。
仲介手数料は売買金額に応じて上限額が決まっており、多くの不動産会社では上限額を仲介手数料として設定しています。
つまり、仲介手数料の相場=法律上の上限額と考えてください。
売買金額 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下 | (売買金額×5%)+消費税 |
200万円超~400万円以下 | (売買金額×4%+2万円)+消費税 |
400万円超 | (売買金額×3%+6万円)+消費税 |
※宅地建物取引業法の第四十六条にて、報酬に関する定めが明示されています。
※報酬の上限額は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(国土交通省)」で記載されています。
たとえば、マンションを1,000万円で売却したケースでは、仲介手数料として36万円支払います。
仲介手数料=売買金額×3%+6万円=1千万円×3%+6万円=36万円
なお、仲介手数料は消費税がかかります。消費税を考えると、実際の支払額は
36万円×1.1=39万6,000円
となります(消費税10%の場合)。
▼仲介手数料についてもっと詳しく知りたい人におすすめの記事
売買契約書に貼る「印紙税(収入印紙代)」
マンションの売買契約をおこなう時は、売買契約書に収入印紙を貼って印紙税を支払う必要があります。
印紙税は、売買契約書に記載された契約金額によって異なります。マンション売却においては、「売買金額」が契約金額です。
法律上は、下表のとおり印紙税が決められています。
契約金額 | 印紙税 | 印紙税 (軽減措置を適用) |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え 1千万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1千万円を超え 5千万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
※参考サイト:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
法律によって、下記条件に当てはまる場合は印紙税の税率が引き下げられます(軽減措置)。
軽減措置の対象となる契約書は、不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和2年3月31日までの間に作成されるものになります。なお、これらの契約書に該当するものであれば、土地・建物の売買の当初に作成される契約書のほか、売買金額の変更等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象となります。
引用元:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」より
かんたんに言うと、2020年3月31日までに不動産の売買契約書を作成すれば、印紙税が半額になります。特に5,000万円を超える金額で売買が成立している場合は、大きな節約になりそうですね。
マンションの査定を依頼する方法
査定の依頼方法は、大きく分けて3つあります。
- 一括査定サイトを利用
- 不動産会社の店舗に直接訪問
- 不動産会社の店舗にメールや電話で問い合わせ
上記のうち、一括査定サイトを利用する方法をおすすめします。
ほか2つの依頼方法だと、複数の不動産会社に査定依頼するときに時間がかかるためです。
また、一括査定サイトは効率性とスピーディーさにおいて利点があります。
不動産一括査定サイトは簡単・早い・無料が特徴の効率的なサービス
マンション売却を成功させるコツは、複数の不動産会社に査定を依頼して比較することです。
しかし、不動産会社をいくつか探して一社ずつ査定依頼しようとすると、意外と時間を使ってしまいます。
その点、一括査定サイトを利用すれば、マンションの情報を1回入力するだけで、複数の不動産会社に同時に査定依頼できて効率的です。
一括査定サービスを提供しているのは、次のようなサイトです。
- すまいValue
- HOME'S
- SUUMO
- HOME4U
- イエウール
これらのWEBサイトで所在地・築年数・間取り・専有面積などマンションに関する情報とあなたの連絡先を入力し、対応可能な不動産会社からの連絡を待つだけです。
WEBサイトでの入力に慣れている人なら、1~2分で申込が完了します。店頭に足を運ばなくて良いというのも、忙しい人にとって大きなメリットでしょう。
不動産一括査定についてさらに詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。
マンション売却によって生じる税金
先述したように、マンションの売却にはさまざまな費用がかかります。
しかし、出ていくお金はそれだけではありません。
売却によって利益が出た場合は、「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が生じます。
マンションの売却金額から費用を引いたものを「譲渡所得」といい、これに税金がかかるのです。
譲渡所得 = 売却金額 - 取得費 - 譲渡費用
※取得費とは、不動産の購入費用のこと
※譲渡費用とは、不動産を売却した時にかかった費用のこと
譲渡所得にかかる税率は、不動産の所有期間によって異なります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年超え | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※参考:土地や建物を売ったとき(国税庁)
※復興特別所得税は一律2.1%で所得税に対して課税されます。(所得税×2.1%)
う~ん、ちょっとむずかしいよ…
じゃあ、イメージしやすいように具体例で考えてみるでござる。
(事例)50代男性Aさんは、20年前に4,000万円でマンションを購入しました。今年、住み替え目的でマンションを売り出したところ、4,500万円で売ることができました。仲介手数料などかかった諸費用は、全部で141万円です。
このケースにおける譲渡所得は、次のように計算します。
譲渡所得 = 4,500万円 - 4,000万円 - 141万円 = 359万円
所有期間は20年なので、かかる税率は20.315%です。
生じる税金 = 359万円 × 20.315% = 約73万円
このように、マンションの売却で利益が出ると税金が生じるのです。
なお、税制上、「3,000万円の特別控除」など節税になる特例が用意されています。適用条件にマッチすれば高額な納税をしなくても済むため、しっかり活用しましょう。
マンション売却後は確定申告をすること
このように、マンション売却で利益が出た場合は税金がかかるため、確定申告によって売却による収益を申告する必要があります。
確定申告が不要なケースはありますが、節税になるなど得する特例を利用するには確定申告は必須です。(※特例は利用条件があります)
以下に該当する場合は、確定申告は必須と考えましょう。
- マンション売却で利益が出た場合
- マンション売却で利益は出なかったものの、特例を利用する場合
マンション売却で利益が出ると税金が課税されるため、売主は確定申告をおこない納税しなければなりません。
マンション売却で利益が出ても出なくても、損益通算・繰越控除という節税になる特例を受けたい場合は確定申告が必要です。
確定申告の時期
確定申告の時期は毎年2/16~3/15です。税務署は土日休みのため、土日に差し掛かっていれば翌営業日に繰り上がります。
例えば、2020年(令和2年)の確定申告期間は、2020年2月18日(月)~2020年3月16日(月)です。
新型コロナ対策のため、2020年の確定申告は4月16日(木)まで期間が延期されているでござる。
なお、マンションの売却時期によっては確定申告までかなり時間が空くことになります。確定申告が遅れると「無申告加算税」、納税が遅れると「延滞税」がかかるため、申告忘れ・納税忘れには注意してください。
マンション売却後の確定申告・譲渡所得の計算・特例については、こちらの記事で詳しく説明しています。
マンション売却に関するよくある疑問・質問
この章では、マンション売却に関するよくある疑問・質問について解説します。
これからマンション売却をおこなう人の参考になれば幸いです。
Q.訪問査定を避けることは可能ですか?
可能です。
申し込みフォーム入力時の「その他要望」に訪問査定を希望しない旨を記載いただく、または申し込み後に不動産会社の担当者にお伝えください。
現在ではアプリを利用したオンライン査定ができる不動産会社も増えてきております。方法に関しては不動産会社の担当者に相談いただければと思います。
Q.今のマンションに住宅ローンが残っていても売却できる?
マンションの譲渡金額で住宅ローンを完済できるなら、住宅ローンが残っていても売却は可能です。
もし、住宅ローンがかなり残っていて、譲渡金額だけではカバーできない場合は、
- 自己資金から捻出する
- 新しい住宅の購入資金にローン残債分を含めた「買い替えローン」を利用する
などの手段をとることで、売却が可能になります。
Q.中古で購入したマンションを売るときに注意すべきことはある?
購入当時の状態が「新築マンション」と「中古マンション」のどちらであっても、売却する時のポイントは同じです。
どちらの場合も、購入検討者からすれば、すでに誰かが住んだ「中古マンション」であるためです。
Q.共有名義のマンションでも売却できる?
共有名義でも売却は可能ですが、売却することに対して名義人全員の同意が必要です。
複数の名義人から同意を得ることが難しいケースもありますが、共有名義のマンションは持ち続けずに売却したほうが良いです。
Q.「居住中」「空室」どちらがマンションを売却しやすい?
空室状態のほうが売りやすいです。
しかし、無理に空室にする必要はありません。空室で売ろうとすると、売出し中のマンションと新居で二重に居住費がかかってしまうためです。また、マンションがいつ売却できるかも分かりません。
Q.マンションの角部屋だと、高く売れるの?
角部屋は中部屋よりも資産価値が高いことが多く、中部屋よりも3%ほど高く売れる傾向にあります。
しかし、角部屋だからといって必ずしもメリットになるとは限りません。
売れやすい角部屋の特徴を知り、それを上手にアピールできれば高値での売却を期待できます。
Q.ペットを飼っていたマンションを売却するときの注意点は?
ペットを飼っていたマンションでは、動物の爪による壁・床のひっかき傷や臭いなどが売却価格にマイナス影響を与える可能性があります。
下記3つの注意点に気を付けることで、マイナス部分を軽減することができます。
- フローリングやクロスなど簡単な補修をする
- 消臭を徹底的におこなう
- 内覧時は換気や清掃をしっかりおこなう
Q.転勤するとき、マンションは売ったほうが良い?
転勤時、マンションは売却する・人に貸す・空き家で置いておくという3パターンが考えられます。
下記ケースに当てはまる場合は、売却に向いていると言えます。
- マンションの所在地が都市部ではない
- 都市部だが交通の利便性が低い場所にある
- 今住んでいる地域に戻ってくる可能性が低い
Q.マンションは売却と賃貸、どっちが良い?
売却と賃貸は、まったく別のマンションの処分方法と考えた方が正しいです。
なぜなら賃貸の場合、マンションの入居者の募集や対応、空室リスクの管理など、不動産経営を始めるという意識が必要と言えるからです。
将来的にマンションを管理・運営していくつもりがないなら、売却した方が良いでしょう。
Q.名義人が認知症の場合、マンションは売却できる?
名義人本人に「意思能力があるかどうか」が判断軸となります。
ここでいう意思能力とは「不動産の売買の是非を判断できる能力」を指し、意思能力のない人が売買契約をしても無効になります。
名義人に意思能力がない場合、成年後見制度を利用すればマンションを売却できます。
Q.マンション売却のために壁紙を貼り替えるべき?
マンション売却では、基本的に壁紙を貼り替える必要はありません。気になるならセルフでできる壁紙のケアをする程度で大丈夫です。
ただ、下記のようなケースでは、壁紙の貼り替えを検討したほうが良いでしょう。
- 築浅のマンションである
- 極端に汚れている
- においが付いている
- 大きな穴が開いている
Q.マンションを売るために床の修復はしたほうが良い?
基本的に、多少の床のキズなら修復作業は必要ありません。中古マンションを購入するという時点で、購入者は床の傷は想定内だからです。
ただし、購入希望者から要請があったり、歩くときに支障があるような穴が空いていたりする場合には、修繕を検討する必要があります。
Q.マンションの火災保険はいつ解約するべき?
かならず、マンションを引き渡した後に解約をしてください。
引き渡し前に火災が起きてしまった場合、売買契約が済んでいても売主は買主に「買ってください」と主張できないためです。
もっと詳細を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
Q.マンション売却後、修繕積立金は戻ってくる?
マンションを売却しても、修繕積立金は返金されません。管理費も同様です。
なぜなら、長期修繕計画にもとづいて積み立てているものであり、返金となれば修繕費用に不足が生じてしまうためです。
【詳細を知りたい人向け】マンション売却の具体的な手順・流れ(全13ステップ)
記事のはじめに流れの全体を紹介しましたが、この章では「もっと詳しく知りたい!」という人向けに、より細かく流れと手順を説明します。
※ここでは、「不動産会社の仲介による売却」に限定して説明します。
この章では、売主のあなたがマンション売却を脳内シミュレーションできるレベルで理解できるように、全13ステップに分けています。
全体の流れを知ることは、漠然とした不安をなくすためだけではありません。各ステップでおこなうことを事前に知れば、効率よくスピーディーなマンション売却を目指せます。
1.【準備】マンション売却価格の相場を調べる
まずは、不動産市場において自分のマンションがどの程度の相場なのかを調べましょう。
あとから詳細を説明しますが、マンションを売るためには不動産会社による査定が必要です。査定の前におおよその価格相場を把握しておくことで、「不動産会社から提示された査定額は、適正であるか」を判断できます。
さて。
「査定額はプロの不動産会社が出すんだから、適正価格に決まっているでしょ」と思いませんか?
基本的にはちゃんと適正価格を出してくれます。しかし、悪意を持って、相場よりも高い査定額を提示する不動産会社もいます。知識の少ない人でも不動産会社を見極められるように、マンションの相場を把握しておくことをおすすめします。
なお、この工程は必須ではありません。事前に相場を調べなかったからといって、致命的な損失が生じることはないです。信頼できて実力のある不動産会社を選ぶときに役立つもの、という位置づけです。
マンションの相場を調べる方法
このあとで紹介する中古マンションの売買情報が載っているサイトで、
- マンションのある地域(住所)
- 築年数
- 駅からの距離
- 専有面積
など、あなたが売りたいマンションと同じ(あるいは似た)条件を入力して絞込み検索をします。
そうすることで、あなたのマンションと条件が似ている中古物件が、どのくらいの価格帯で売られているのかを確認できます。
では、相場チェックに使えるマンション売買サイトとして、おすすめの2つを紹介します。
過去の成約価格がわかる「REINS Market Information」
ひとつは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営している「レインズマーケットインフォメーション」というサイトです。過去の不動産取引における成約価格を知ることができます。
- REINS Market Informationのトップページへアクセス
- [マンション]から都道府県・地域を指定して検索
- 自分のマンションと近い条件で絞り込む
レインズマーケットインフォメーションのデータは信用性が高いと言えます。
理由を説明するにあたり、「レインズ」というシステムについてお話ししましょう。
レインズマーケットインフォメーションとは別に、不動産会社だけが閲覧できる「レインズ」というオンラインシステムがあります。レインズでは不動産会社から収集した成約情報をたくさん保有しています。
それらの成約情報を一般公開しているのが「レインズマーケットインフォメーション」です。成約時期・築年・面積・価格などに幅を持たせて表示しているため、どの物件なのかを特定できないようになっています。
このように、レインズマーケットインフォメーションは不動産会社から直接収集しているデータなので、信用性が高いと言えるのです。
売り出し価格がわかる「不動産ジャパン」
もうひとつは、公益財団法人不動産流通推進センターが運営している「不動産ジャパン」というサイトです。成約価格ではなく、売り出し価格を知ることができます。
- 不動産ジャパンのトップページへアクセス
- [不動産物件検索【買う】]から[マンション]をクリック
- 日本地図からマンションの所在地を選択
- 自分のマンションと近い条件で絞り込む
ただし、ひとつ注意点があります。
不動産ジャパンに載っているマンションの価格は「売り出し価格」です。相場の参考としては十分ですが、実際の成約価格は売り出し価格より下がります。
実際にマンションを売りに出すと、購入検討者から価格交渉があったり、不人気で値下げせざるをえなかったりします。売り出し価格で成約に至ることは難しいと考えておきましょう。
2.【準備】不動産会社に査定を依頼する
自分のマンションの相場を把握できたら、次は不動産会社にマンションの査定を依頼します。
マンション査定とは、マンションの価値を知るためにおこなう調査を指します。売却にあたって必ずおこなう工程だと思ってください。
不動産会社がおこなう査定は「机上査定」「訪問査定」の2種類です。
- 机上査定:地域・築年数・物件の面積などの基本情報や過去の不動産取引事例を参考に、現地の情報を加味せず査定する。
- 訪問査定:不動産会社が該当マンションを訪問して現地で得られる情報を加味して査定する。
机上査定と訪問査定の違いは、マンション自体の状態や売りに出す1室の状態、マンションの周辺状況など、現地で分かる情報を加味するかしないかです。
当然、現地情報を加味する訪問査定のほうが、査定の精度は高いと言えます。
ただ、机上査定の精度が著しく低いわけではありません。過去の成約事例や相場をもとに査定しているので妥当性はあり、訪問査定とかけ離れた結果になることは基本的にありません。
種類 | 査定の精度 | 現地情報 | かかる時間 |
---|---|---|---|
机上査定 | 中 | 加味しない | 査定依頼後、早ければ当日中に査定結果をもらえる。(電話やメール) |
訪問査定 | 高 | 加味する | 訪問時間は1時間程度。査定結果をもらえるのは数日~1週間後。 |
おすすめは、机上査定を受けてから訪問査定を受ける方法です。
- 複数の不動産会社に机上査定を依頼する
- 査定結果や担当者の対応から2~3社に絞る
- 絞った2~3社に訪問査定を依頼する
訪問査定でマンション査定額を出してもらったら、その情報をもとに不動産会社を選ぶというステップに移ります。
3.【準備】仲介を頼む不動産会社を選ぶ
マンションの査定結果がそろったら、仲介を依頼する不動産会社を選びます。
不動産会社選びは、マンション売却が成功するかしないかを左右するくらい重要です。査定価格が高いからという理由だけで、不動産会社を選ばないようにしてください。
マンションをなるべく高く早く売るためには、マンション売却のノウハウを持っていたり地域のことをよく知っていたりする不動産会社を選ぶことが大切です。
また、マンションの売却は3ヶ月~半年と長期にわたり、不動産会社とも長く付き合うことになります。大事なマンションを任せる相手なので、信頼できるかどうかというのも大切です。
査定価格の高さ・低さだけで不動産会社の良し悪しを判断してはいけません。
また、営業マン自身の力量によってもマンション売却のゆくえは左右されるため、デキる人かどうかの見極めも重要になってきます。
4.【準備】不動産会社と媒介契約を結ぶ
マンション売却の仲介を頼む不動産会社を選べたら、次はその不動産会社と媒介契約(ばいかいけいやく)を結ぶ必要があります。媒介は仲介と同じ意味です。
媒介契約を結んで初めて、不動産会社に「マンションの買主を見つけて話をまとめてもらう」「売買契約を成立してもらう」ことができます。
媒介契約には、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3種類があり、売主が自分で選びます。
それぞれ契約条件が異なり、またマンションの性質によって合う契約と合わない契約があります。つまり、選んだ媒介契約によっては、思うようにマンションの売却が進まない可能性があります。
媒介契約については、「失敗したくない!マンションを高く売る5つの対策」の章で説明します。
5.【売り出し】マンションの売り出し価格を設定する
媒介契約を結んだあとは、自分のマンションをいくらで売り出すのか、不動産会社と相談しながら設定します。
売り出し価格は3つの価格「最低価格」「希望価格」「査定価格」を参考に決めていきます。
- 最低価格:「この価格で売れないと困る!」という最低ライン
- 希望価格:「この価格で売れてほしい!」という理想価格
- 査定価格:不動産会社が査定した価格
最低価格は、ローン残債などから、最低でもこの価格で売れてもらわないと困る価格です。最低価格は値引きにどこまで対応できるかの指標にもなります。
希望価格は、この物件で売れて欲しいという理想の価格です。売却するマンションと似た物件の成約事例から、高く売れた事例を参考に決めます。
過去の成約事例は、不動産流通機構が運営している「REINS Market Information(レインズマーケットインフォメーション)」から確認することができます。
査定価格は、不動産会社の査定によって出る価格です。
これら3つの価格を参考に不動産会社と相談しながら、最初の売り出し価格を決定しましょう。
6.【売り出し】マンションの広告活動を始める
売り出し価格が決まったら、いよいよ不動産会社によるマンションの広告活動が始まります。
マンションの広告活動とは売るための動きのことで、具体的に以下のことをおこないます。
- 広告をして集客する(購入検討者を集める)
- 購入検討者と内覧スケジュールを調整する
- 実際に室内や共用部を案内する
- 購入検討者と価格や条件を交渉する
これらの作業は不動産会社の営業マンが主導しておこないます。
集客部分では
- suumoなどの不動産ポータルサイトや自社サイトに売り出し物件としてマンションの情報を掲載する
- チラシの投函などで買主を募集する
- ほかの不動産会社から購入検討者を紹介してもらう
といったことをおこないます。
集客の段階、つまり購入を検討する人が現れるまでは、売主は待ちの体制となります。この間、不動産会社と連絡を密に取って売却活動の状況を常に把握しておきましょう。
あなたが一度住んでいる時点で「中古のマンション」という位置づけになってしまうけれど、住んでいたからこそ分かるマンションの魅力があるはずだよ!積極的に営業マンに伝えるでござる!
7.【売り出し】マンション購入を検討している人の内覧に対応する
売却活動は、不動産会社が主体となっておこないます。
この段階では、売主はマンション購入を検討している人の内覧に対応することがメインとなります。
売主はスケジュールを調整する
マンションの売却活動において、売主はスケジュールを調整しましょう。
基本的に、内覧は売主も在宅の状態でおこなうので、売主は室内にいなければいけません。つまり、購入検討者の内覧希望日時に合わせて立ち会う必要があります。
当日は、営業マンが見学者を連れてきて、営業マンが室内を案内するという流れになります。ケースバイケースですが、特に売り出しはじめは週に数件以上の内覧予約が入ることもあります。
土日以外の平日夜なども見学希望もあるので、なるべく売主もスケジュールを調整して対応しましょう。
内覧の具体的な準備や心構えについては、「失敗したくない!マンションを高く売る5つの対策」の章で説明します。
8.【売り出し】購入希望者と価格交渉をする
あなたのマンションを購入したい人が現れたら、具体的な価格交渉に入ります。
ほとんどの場合、現在の売り出し価格から値引きをしてほしいと言われます。
そのため、マンションの売り出し価格は、値下げ要求がなされる前提で決めておきましょう。あらかじめ不動産会社と相談し、「これ以上は値下げできない!」というラインを決めておくことが大切です。
価格交渉における3つのポイント
価格交渉をするときのポイントを3つ紹介します。
交渉を断る・見送る
たとえば、3,000万円のマンションを2,000万円に値下げして欲しいなど、無理な値引き要求は断っても大丈夫です。
また、売却活動をはじめて間もない時期に値引き要求があった場合など、ほかの購入希望者が現れる可能性が高い場合は見送るのも一つの手です。
このあたりの価格交渉は、ステップ5で紹介した「最低価格」「希望価格」「査定価格」を念頭において、不動産業者と相談しながら進めていきましょう。
リフォームの見積もりから判断する
リフォーム分の値引き要求がある場合は、まずは自分(売主)でリフォームの見積もりを取りましょう。
そのうえで、売主がリフォームするか、リフォーム分の値引きに応じるか、あるいは断るかを判断しましょう。
金額面以外の条件も同時に交渉する
また、価格交渉のときに、金額以外の条件を視野にいれることも大切です。これは価格で損しないためではなく、「無駄なくスムーズに交渉」するためのコツです。
たとえば、あなたが住み替えを理由にマンションを売却するとします。もし価格交渉の時点で次の住まいが見つかっていない場合は、「引き渡し時期を遅らせられないか」などの条件交渉を価格交渉とセットで進めるとスムーズです。
9.【契約成立】申込を受けて売買契約を結ぶ
売主と買主のあいだでマンションの売買価格・条件について合意できたら、いよいよ売買契約をおこないます。
マンションの売買では、契約の前に「申込」という段階があります。申込は買主がその売り物件を押さえることであり、ほかの人がその部屋を欲しいといっても二番手の扱いになります。
売主目線で言うと、申し込みを受けてから正式に売買契約を結ぶことになります。申し込みから売買契約までは、おおむね1週間程度です。
契約日におこなうこと
マンション売買契約の当日は、主に下記3つのことをおこないます。
- 不動産会社の事務所などに売主・買主が集まる
- 不動産会社の営業マン(宅建士)が買主に重要事項説明
- 説明に問題なければ売買契約書など書類に署名&捺印
主に営業マンと買主のやり取りになるので、売主がやることは署名・捺印くらいです。
売買契約は複雑でむずかしそうなイメージがあると思います。でも、必要書類や署名・捺印など、契約する上で必要なことは不動産会社から指示があります。迷うことはありませんので安心してください。
注意点:売買契約書の内容はしっかり確認する
売主がおこなうことは署名・捺印くらいだと伝えましたが、売買契約書の内容は売主自身がしっかり確認しましょう。
特に、次の4項目は間違いがないかチェックしてください。
- マンションの売買契約書に書かれている売買価格
- 手付金の金額
- 引き渡し日時
- 瑕疵担保責任の取り決め
トラブル防止のためには不動産会社に任せきりにせず、自分の目でひとつひとつ確かめることがとても大切です。
10.【契約成立】手付金を受け取る
一般的に、売買契約のタイミングで売主は買主から手付金を受け取ります。
手付金とは購入金額の一部で、マンションの売買契約がかんたんに解約されないようにするためのものです。
法律上、手付金の金額は定められていませんが、マンション売買価格の5~10%が相場です。
手付金については、以下3つのことを知っていれば問題ありません。
- 手付金の相場は売買金額の5~10%(20%以内に収まることがほとんど)
- 手付金は違約金として扱われる
- 手付金は売買金額の支払いに充当される
手付金の相場は売買金額の5~10%
手付金の相場は売買金額の5~10%ですが、高くても20%以内であることががほとんどです。多くのケースでは、100万円や200万円などキリが良い金額か、5%程度の金額に設定します。
手付金は違約金として扱われる
少しややこしくなりますが、売買契約をしたあとは、手付金は違約金として取り扱われます。
買主の自己都合で売買契約を解除するケースでは、買主は支払った手付金の返金を求めることはできません。違約金としてそのまま売主へ渡します。
売主が自己都合で売買契約を解除するケースでは、売主は手付金を返金した上で、手付金と同額を支払います。つまり、手付金の2倍を違約金として買主に渡すことになります。
売買契約が解除されることなく予定どおりマンションの引き渡しまで進むのであれば、手付金は「違約金」としてではなく「支払う売買金額の一部」になります。
手付金は売買金額の支払いに充当される
先ほどお伝えしたように、手付金は売買金額に充当されます。
たとえば、2,000万円で売買契約が成立し、手付金を100万円に設定したとしましょう。この100万円は売買金額2,000万円の一部を支払ったということになり、残りの1,900万円は引き渡し時に支払われます。
もし買主が全額ローンを組む場合は、マンションを引き渡す時に手付金を買主へ返すことになります。
11.【契約成立】買主側の住宅ローン本審査がはじまる
このステップ11は、買主がマンション購入にあたって住宅ローンを利用する場合に発生します。
売買契約を結ぶとき、基本的に買主は住宅ローンの仮審査(事前審査)の承認を得ています。そして、契約が成立したあとに住宅ローンの本審査を受ける流れになります。
仮審査から買主の状況が変わっていなければ、基本的に本審査も承認を得られます。本審査は2週間ほど時間がかかります。本審査に通れば、買主は金銭消費貸借契約(ローンの本契約)をおこないます。
そして、マンションの引き渡し時に合わせてローンを実行する(決済する)という流れになります。
12.【契約成立】代金の決済手続き・マンションの引き渡す(売却完了)
思い出いっぱいのマンションから無事退去したあとは、買主への引き渡しが待っています。
マンションを引き渡す当日は、以下をすべて1日でおこないます。
- 買主からマンション購入代金が支払われる(売主の口座へ入金)
- 売主がローンの残債を完済する
- 抵当権を抹消する
- マンションを引き渡す
マンション引き渡し当日の流れ
マンションを引き渡す当日は、以下のような流れで進行します。
- 不動産会社の事務所などに関係者が集まる
- 買主からの入金確認
- 引渡し関係の書類に署名&捺印
- 金融機関に抵当権抹消に必要な書類を取りに行く
- 司法書士が法務局へ行き抵当権抹消登記および所有権移転登記
上記の手続きをもって、所有権が売主から買主に移転します。そして、マンションの鍵と必要書類を買主に渡せば、引き渡しは完了となります。
なお、引き渡し当日に買主からマンション購入代金が入金されたら、その決済金でローンの残債を返済します(売主のローンが残っている場合)。そのあと、司法書士が抵当権抹消登記をおこなうことで、マンションを引き渡せる状態になります。
ローン残債の返済については、売主は事前にやっておくべきことがありますので、次で説明します。
売主は引渡し日までにローン完済の準備をしておく
売主に住宅ローン残債がある場合は、金融機関に完済手続きをおこないましょう。マンションの引き渡しまでに実際に完済しなさいということではなく、「完済するための準備」をします。
マンションを引き渡すときは、売主から買主へ所有権移転をおこないます。そのためには、マンションに設定している抵当権を抹消しなければいけません。そして、抵当権を抹消するためには、住宅ローンの完済が必要です。
完済手続きの方法としては、多くの場合は売主が店舗に出向いて
- マンションの引き渡し日(決済日)の確認
- 必要書類の確認および完済手続き
をおこないます。
この手続きをもって、抵当権を抹消する準備が完了となります。
当日スムーズに完済手続きが済むように、引き渡し日までに金融機関に連絡をして、完済手続きの方法を確認し準備しておきましょう。
13.【売却後】確定申告をする
マンションを売却できたら、その翌年に確定申告をおこないます。
売却を検討している段階で税金のことまで考えている人は少ないです。確定申告や税金については、大手をはじめとする“信頼できる不動産会社”であればちゃんと教えてくれますので安心してください。
しかし、万が一誰も教えてくれなければ、無駄なお金がお財布から出ていってしまうかもしれません。
確定申告について「マンション売却の翌年は確定申告をすること」の章で説明していますので、ぜひ一度読んでみてくださいね。
マンションの売却価格や最新売却事例をチェック
過去の成約事例から求めた平均売却価格や、最新のマンション売買事例をチェックできるコンテンツを用意しています。
まとめ
今回紹介した内容を一度に理解する必要はありません。
まずは、マンション売却の全体像をざっくり掴んでください。そして、今のあなたの段階に合った行動を取っていきましょう。
今回の記事がマンション売却のための参考になれば幸いです。