近所の騒音による引越し費用は騒音元に請求できる?

更新日: 2024年1月29日

近所の騒音による引越し費用は騒音元に請求できる?

この記事で解決すること
  • 騒音で引越しの際、隣人や大家から賠償を得ることがある。
  • 工事騒音での引越し時、施工業者や自治体から賠償を受けられることも。
  • 騒音問題では地域の音量基準が受忍限度の判断基準になる。
  • 騒音で警察や行政に訴えても引越し費用の補償は期待薄だが、介入要請は可能。

「家の近くに工事現場があり、毎日続く騒音に耐えられなくなった」
「隣人が夜な夜な喧嘩していて、うるさくて眠れない。もう引越ししたい」

…といったように、周囲の騒音が原因で今の住まいから引越しせざるを得なくなる方がいます。こうした理由で居住者が退去する場合、大家には補償を行う義務はないのでしょうか?

本記事では、騒音が元で引越ししなければならなくなった人の費用の請求先について、法的な観点からQ&A形式で回答します。

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

神奈川県弁護士会所属、2004年に弁護士登録。賃貸トラブルなどの不動産に関する問題を数多く取り扱う。その他、倒産関係や企業法務も担当。

Q1. 隣人の騒音が原因で引越しする場合は隣人や大家(管理会社)に費用請求できますか?

まず、大家(管理会社)に対しての費用請求は、ケースによりけりですが「損害賠償」という形で行うことが可能です。

賃貸物件のオーナーには「使用収益をさせる義務」があり、これは簡単に言えば「借主が問題なく生活できるように環境を整える義務」のことです。そのため、居住者が隣人による騒音被害で困っていると連絡をしてきたら、大家は問題を放置せずに対処しなければなりません。

そのうえで、いつまでも問題が解消されない場合は「使用収益をさせる義務」を大家が破っていることになるので、民法第415条・第709条・第710条に基づいて、損害賠償をさせられる可能性があります。

関戸淳平さん

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

専門家の解説

隣人に対して請求するという場合でも、同じように損害賠償の形式で行うことができます。この場合、民法第709条および第710条にもとづき、騒音の発生源に対して、不法行為による損害賠償を請求します。隣人の迷惑行為があった場合、大家は他の借主の住環境を維持するため、隣人との賃貸借契約の解除も視野に入れ、改善や退去を要請する義務を負っています。実際に大家の責任が認められた裁判例もいくつかあります。「大家に相談しても対応してもらえなかった」という事情がある場合には、隣人のみでなく、大家に対する損害賠償請求も検討すると良いでしょう。

Q2.工事の振動や騒音が原因で引越しする場合は工事会社や行政に費用請求できますか?

こちらもケースによりけりですが、前項の隣人の場合と同様に、工事を行っている施工会社や公共工事を発注した自治体などを相手取って、引越し費用などを損害賠償請求することができます。

ただし、前述した対管理会社・対隣人の場合も同様に、実際に損害賠償請求をして、それが受理されるかどうかは被害者の状況によります。騒音被害を訴えても発生元への注意喚起で終わるケースも多く、被害者側は請求対応の手間や心的負担を考えると、「自身で速やかに新しい住居へ移る」という選択肢を取るほうが賢明な場合もあります。

とはいえ、泣き寝入りに納得がいかないという人は、次項で紹介する「騒音が発生している事実を証拠として示す」ように動くことが大切になります。

関戸淳平さん

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

専門家の解説

建設工事は一時的なものであることや、他の場所では行えないことなどを踏まえ、その騒音の音量規制は一般の基準よりも緩やかになっています。したがって、継続的に発生する生活騒音や工場などの騒音に比べると、損賠賠償が認められるハードルが上がる場合があります。工事が短期に終了するような場合には、「引越しまでは不要」と判断され、慰謝料請求のみが認められるということもあり得ます。

Q3.「騒音」の定義は「◯db以上」といった音量の基準がありますか?

客観的に見て「騒音」であるかどうかを被害者が示すことができないと、ここまで紹介してきた損害賠償請求は難しくなります。騒音被害を訴える際の判断基準になるのが「受忍限度を超えるか(社会通念上、我慢できないラインか)」という概念です。

騒音問題における受忍限度は、各自治体の条例で定められている音量を超えるかどうかが1つの基準となります。例えば、東京都の場合は「知事が指定する騒音に係る環境基準を適用する地域及びその地域の類型による区分」 内にて、時間区分ごとの基準値が定義されています。

東京都知事が指定する騒音に係る環境基準を適用する地域及びその地域の類型による区分

出典:騒音に係る環境基準|東京都環境局

上記の表のように、地域差はありますが昼間であれば55dB超、夜間であれば45dB超の音量があれば、騒音として訴えられる可能性が高いです。

仮に損害賠償請求を起こすのであれば、こういった「騒音と呼べる音量」が定常的に発生していることを証拠とすれば、受忍限度を超えていると示すのに効果的です。自身の居住地域の騒音基準を確認したうえで、騒音計などを用いて実計測するのが良いでしょう。

関戸淳平さん

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

専門家の解説

注意したい点として、基準はあくまで行政が住民の環境確保のために定めたものですので、この基準を超えたからといって直ちに損害賠償が可能となるものではないことです。実際の裁判では、騒音の原因・頻度、被害の内容、生活状況などの諸事情から「受忍限度」を超えるかが判断されます。もっとも、この基準を超えるかどうかは重視される傾向にありますので、損害賠償請求を検討される場合には計測は必須といえます。住んでいる自治体によっては、騒音器や振動器を貸し出してくれるケースもあるため、相談してみましょう。

Q4. 騒音に関するトラブルへ警察や行政に介入してもらうことはできますか?

騒音問題というのは「民事紛争」です。警察は「民事不介入」の原則があるため、騒音を巡るトラブルに割って入り、解決に動くことができません。

ただし、事件性を伴う場合や、被害者の心身に影響を及ぼすレベルの騒音については、「犯罪」として通報する要件を満たす場合もあります。自治体の場合も同様で、ケースによっては「迷惑防止条例」の適用を行ってくれる可能性があります。

双方ともに騒音元への厳重注意などで対処してくれる場合がありますが、最終的に「引越しのための費用を騒音元に払わせる」といった強制力は持っていません。また、警察や行政の介入がさらに騒音元とのトラブルを加速させる場合もあるので、頼るのであれば大家もしくは弁護士の方が良いでしょう。

関戸淳平さん

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

専門家の解説

「騒音が刑事罰に問われるかどうか」という刑事の問題と、「騒音被害を理由に損害賠償請求ができるか」という民事の問題は別です。損害賠償請求を目的としているのであれば、まずは端的に民事の問題として弁護士へと相談をするのが良いでしょう。もっとも、「嫌がらせ目的で騒音を起こされている」など悪質なものについては、刑事・民事両面から責任追及していくことも考えられます。刑事事件化すれば、民事上の交渉も進めやすいという側面もあります。これら複合的に責任追及することを検討する場合にも、まずは弁護士へと相談されると良いかと思います。

まとめ

騒音被害で引越しする場合の費用について、お伝えした内容は次のとおりです。

  • 隣人の騒音で引っ越しせざるをえない場合は、騒音元の隣人か大家へ損害賠償請求できる場合がある
  • 工事の騒音で引っ越しせざるをえない場合は、施工会社や、公共事業の発注元である自治体に損害賠償請求できる場合がある
  • 騒音被害の訴えは「受忍限度を超えるか」が焦点となり、各地域で「騒音」とされる音量(dB)は定められている
  • 騒音被害を警察や行政に訴えても引越しのための費用を得られる可能性は低い

騒音トラブルは心身に多大なストレスを与えます。いまの住居に継続して住むことが難しいと感じる人は、適切なダンドリを踏んだうえで、損害賠償請求による引越し費用の捻出を考えてみましょう。

監修者:弁護士 関戸淳平 / 横浜ユーリス法律事務所

神奈川県弁護士会所属、2004年に弁護士登録。賃貸トラブルなどの不動産に関する問題を数多く取り扱う。その他、倒産関係や企業法務も担当。

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