賃貸物件の退去費用の相場はどれくらい?原状回復はどこまですればいい?

更新日: 2024年2月1日

賃貸物件の退去費用の相場はどれくらい?原状回復はどこまですればいい?

引っ越しで賃貸物件を退去する場合、原状回復費用やクリーニング代などの退去費用を請求されるのが一般的です。

原状回復費用の相場は、調査の結果、一人暮らしなら5万円前後、家族なら7万円~9万円ほどかかることが多いようです。

ただし、原状回復費用は単純に部屋の広さ以外にも、築年数や住んでいた期間、部屋の状態によって左右されます。
築年数が古いほど、早く引っ越す人ほど、部屋の汚れや傷が多いほど、原状回復費用は高くなる傾向があります。

本記事では退去費用の相場に加えて、退去費用を安く抑える方法や退去時によくあるトラブルについて解説します。
これから引っ越しを予定している人は、本記事を参考に、退去費用の減額交渉にチャレンジしてみてください。

賃貸物件の退去費用(原状回復費用)とは?

賃貸物件の退去費用(原状回復費用)とは?

賃貸物件を退去する際にかかる費用は大きく分けて下記の3種類がかかります。

  • 原状回復費用
  • クリーニング費用
  • 違約金

原状回復費用とは、借主の故意過失によってできた傷や汚れ、壊してしまったものなどを元の状態に復旧するための工事にかかる費用のことです。
入居時と全く同じ状態にするという意味ではなく、その工事費用の全額を借主が負担しなければならないものでもありません。

クリーニング費用は、文字通りホームクリーニングにかかる費用のことで、入居時に支払うケースと退去時に払うケースがあります。
退去時に支払うクリーニング費用に関しては、契約書にその金額が明記されているはずですので、改めて確認しておきましょう。

違約金で請求されるケースが多いのは『短期解約違約金』です。短期解約違約金に関しては1年以内に退去する場合1ヶ月分の家賃を違約金として支払うといった取り決めがされていることが一般的です。
その内容は物件によって異なるため、契約時に交付された重要事項説明書を確認してください。
また、家賃の滞納などがあった場合も、退去費用と一緒に請求されるのが一般的です。

退去費用の相場はどれくらい?

退去費用の相場はどれくらい?

退去費用は、0円の場合もあれば、100万円近い退去費用を請求されるケースもあるなど様々です。

退去費用は主に、部屋の使用状況(どの程度の修繕が必要か)と、汚れや傷の原因(借主の故意過失によるものかどうか)によって決まります。

それ以外には、部屋の広さ、建物の築年数、居住年数なども退去費用に影響を及ぼすとされています。

無人契約機検索サイト『アトムくん』が2020年3月に退去費用を支払った経験のある200名を対象に行ったアンケート調査では、下記のような結果が出ています。

間取り 請求された退去費用の平均
ワンルーム、 1K、1DK、1LDK (119件) 49,980円
2K、2DK、2LDK (58件) 79,924円
3DK、3LDK、 4K、4DK、4LDK (23件) 90,139円
総合 63,283円

間取りが広いほど請求された退去費用の平均が高くなっている理由として、退去費用のうちクリーニング代は、一般的に部屋の広さに比例して高くなることが関係していると考えられます。

居住年数 請求された退去費用の平均
~3年(79件) 49,431円
4年~6年(70件) 61,694円
7年~(51件) 87,090円

本調査を見る限りでは、部屋が広いほどそして居住年数が長いほど退去費用が高くなると考えられますが、実はそうとも言い切れません。

例えば、経年劣化・通常損耗以外の傷や汚れがなく、契約書にクリーニング代に関する特約が無い場合など、広い部屋に10年以上住んでいたとしても退去費用がかからないケースも少なくないためです。
また、居住年数が長いほど、入居者が負担すべきとされる原状回復費用の割合が低くなるため、退去時の部屋の状況が同じであれば、長く住んだ人の方が退去費用は安くなります

長く住んでいるうちに、より多くの傷や汚れがついてしまったのかもしれませんが、回答者の中には、負担する必要のない退去費用まで請求された人が多く含まれているとも考えられます。

後述する予防策を講じて、負担する必要のない退去費用を払わないようにできれば、退去費用を平均値の半分以下にすることができるでしょう。

退去費用に関するよくあるトラブル

退去費用に関するよくあるトラブル

退去費用に関するよくあるトラブルを2つ紹介します。

高額の退去費用(原状回復費用)を請求される

退去時に高額の退去費用を請求されるというトラブルが頻発しています。
その中でも特に多いのが、『入居前からあった傷や汚れの修繕費用を請求された』『オーナーが負担すべき修繕費用を請求された』といったトラブルです。

このトラブルを解決するには、入居者が負担すべき退去費用の範囲を正しく理解しておくのが効果的です。

退去費用の減額交渉のコツは、本記事の後半で詳しく解説していますので参考にしてください。

敷金が返還されない

敷金は礼金とは異なり、滞納や入居者負担となる修繕が発生しなければ、全額戻ってくるはずのお金です。
敷金ありの物件の場合、違約金や入居者負担分の原状回復費用などの退去費を差し引いた金額が返ってきます。

しかし、あれこれと理由をつけて敷金を返還しない悪質な不動産会社や不動産オーナーもいるため、敷金に関するトラブルも後を絶ちません。
知識がないことで損をしないように、入居者が払わなくてもいい費用にはどのようなものがあるのか理解し、高額請求された場合は正しく反論できるようにしておきましょう。

退去費用を安く抑えるためにやっておくべきことは?

退去費用を安く抑えるためにやっておくべきことは?

以下の6つのポイントを押さえておくことで、退去費用を大幅に安く抑えることが可能です。

  • 入居時に写真を撮っておく
  • 床や壁を保護する
  • 部屋でたばこを吸わない
  • 定期的な掃除を心掛ける
  • 退去前に掃除をしておく
  • 交渉する

基本的には、退去間際ではなく、入居時すぐから心がけておくとよいことが多いです。
しかし中には、入居後の対策も可能な項目もあるので、今からでもぜひチャレンジしてみてください。

入居時に写真を撮っておく

入居時から、傷や汚れがあった場合は、退去時にその分の修繕費用を請求された場合に反論できるように、必ず写真などで証拠を残しておきましょう。
修繕が必要なほど目立った傷や汚れ、設備の故障を見つけた場合は、至急管理会社に連絡してください。

床や壁を保護する

生活をしているうえで多少の傷や汚れはつき物ですが、傷や汚れをつけないための予防が大切です。

例えば、キャスターつきの家具などを使用する場合は、椅子の下に床を保護するためのカーペットやラグなどを敷く、ベッドやソファーなど家具の脚にカバーや保護パッドをつける、家具を動かす時に引きずらないといった小さな工夫で、不注意で床や壁に傷がついてしまうリスクを軽減できるでしょう。

もし室内でペットを飼う場合や小さな子どもがいる家庭は、あらかじめペットや子どもが傷つける可能性のある柱や壁などを保護し、立ち入れるスペースをゲージなどで区切るようにすると良いでしょう。

特に、フローリングの床は張り替え費用が高額になりやすいため、フロアタイルやカーペットなどで床を保護するのがおすすめです。

部屋でたばこを吸わない

部屋の中でたばこを吸っていて壁や建具がヤニで変色してしまった場合、壁紙などの全面張り替え費用やにおいを除去するための特別な清掃が必要になります。

換気扇の下でたばこを吸う人も多いですが、退去費用を安くするという意味ではあまり効果が期待できません
高額請求を予防するためにも、部屋の中でたばこを吸わないようにしましょう。

定期的な掃除を心掛ける

善管注意義務違反といって、借りている物件の定期的な掃除を怠ったことが原因で、高額な退去費用を請求されることがあります。

例えば、窓や水回りなどの水分を拭きとらずに放置したことで大量のカビが発生してしまったり、床材や壁などが腐食してしまったりした場合には、善管注意義務違反として多額の原状回復費用を請求されても文句は言えないでしょう。

自分では対処できない、雨漏りや水漏れなどを見つけた場合は修理を依頼することも入居者の義務ですので、すぐに管理会社に連絡するようにしてください。

退去前に掃除をしておく

退去前に軽く掃除をして、落とせる汚れを落としておくだけでも退去費用が大幅に安くなることがあります。

目立つ汚れが残っていた場合、本来は通常のクリーニングで落とせる汚れも、落ちない汚れとして、費用を請求される場合があるためです。

また、きれいに掃除していることで、入居中もきれいに部屋を使ってくれていたという印象を持ってもらえるというメリットもあるでしょう。

交渉する

大家さんや管理会社と交渉することによって、退去費用が安くなることがあります。

その際に『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を理解し、入居時に撮った写真などの証拠があると交渉の成功確率は飛躍的に高まります。

前述のアトムくんの調査によると、交渉した人は全体の16%ですが、そのうち交渉に成功して退去費用が安くなった人は81.25%もいたそうです。
交渉することは悪いことではありません。請求された退去費用が高いなと感じたら、次に解説する『原状回復費用で払わなくていいもの』や『チェックすべき請求書の項目』を参考に交渉にチャレンジしてみてください。

原状回復費用で払わなくていいものはある?

原状回復費用で払わなくていいものはある?

国土交通省が提示する『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』には、原状回復費用に関して入居者がどこまで支払う必要があるのかが明記されています。

ガイドラインを確認すると、入居者に請求されることが多いものの、実は払わなくていい費用が多いことに気付きます。

例えば、以下のような費用は支払う必要がないため、請求された原状回復費用のうち以下のものが含まれていないか確認してください。

  • 入居時からあった傷や汚れの修繕費用
  • 経年劣化分の修繕費用
  • 用途通りの使用によってできた細かい傷や汚れの修繕費用
  • 部屋全体の修繕費用

もし、これらの費用が退去費に含まれていた場合は、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に則って、費用の減額交渉を行いましょう。

入居時からあった傷や汚れの修繕費用

入居前からあった傷や汚れの修繕費用を入居者が支払う必要はありません。
入居時に撮った写真などで証明することで、その費用は払う必要がなくなります。

経年劣化分の修繕費用

入居者は、入居時と同等の状況にするためにかかる修繕費を負担しなければならないわけではありません。
入居から退去までの期間に経年劣化した部分の修繕費用は原則オーナー負担です。

例えば壁紙(フロス)の耐用年数は6年のため、新築から3年住んでいて張り替えが必要になった場合、入居者が負担するのはかかった費用の50%になる計算です。
ただし、たばこやペットなど入居者側の過失が原因で、物件に大きなダメージを与えた場合、たとえ耐用年数を超える物件に長期間住んでいたとしても、修繕費用が全額免除になる可能性は極めて低いと考えておきましょう。

過去の判例でも、築40年超のアパートに12年住んでいた人に対して、入居者が原因でかかった原状回復費用のうち10~20%程度は入居者が負担すべきという判決が出ています。耐用年数よりも長く住んだら、どんなに過失があっても、経年劣化分の修繕費用は負担しなくていいという考えは間違いです。
特に、フローリングや柱、建具などに不注意で傷をつけてしまうと、住んでいた年数に応じた割引額も少なくなってしまいます。
もし、ペットや子どもなどがいる家庭は、それらをなるべく傷つけないような予防策を講じましょう。

用途通りの使用によってできた細かい傷や汚れの修繕費用

用途通りの使用によってできた細かい傷や汚れの修繕費用

通常損耗・自然損耗といって、普通に生活していた中でできた細かい傷や汚れなどの修繕費用を入居者が負担する必要はありません。

例えば、自然光が原因でできた床や壁の日焼けや、テレビや冷蔵庫の裏の電気やけ、家具を置いていたことでできた床のへこみなどが通常損耗に該当します。

画鋲などであけた小さな穴(壁の下地に達していないもの)に関しては原則オーナー負担とされています。

ただし、釘やビスなどで穴をあけてしまうと、入居者負担になるため注意してください。

部屋全体の修繕費用・設備の交換費用

部屋や設備の一部を入居者の過失で傷つけてしまったからといって、入居者がその修繕費用の全額を負担しなければならないとされた事例は多くありません。

例えば、キャスターつきの椅子でフローリングに傷をつけてしまい、フローリングの張り替えが必要になった場合、1㎡単位もしくは1枚単位(最小単位)で部分補修費用を請求されます。
一部だけ張り替えると、他の部分と色が違ってしまうなどの理由で部屋全体の張り替え費用を請求するのは過大請求に当たる可能性が高く、過去の判例でもその大部分の費用を払う必要がないとされています。

ただし、設備の大部分が壊れてしまっている場合、部屋全体がたばこのヤニなどで汚れてしまっている場合などはその限りではありません

退去費用が高すぎると感じたらチェックすべき請求書の項目は?

退去費用が高すぎると感じたらチェックすべき請求書の項目は?

請求された退去費用が高すぎるのではないかと感じたら、請求書にその場でサインすることをせず、持ち帰って下記の数値が高くなっていないか確認してください。

また、退去費の金額の根拠が曖昧な請求書を提示された場合は、単価・数量・負担割合を明記した請求書の作成を管理会社に依頼しましょう。

単価

壁紙や床材などの単価が相場と比べて高すぎないか確認しましょう。

もしかすると、現状よりも高い材料の単価になっていたり、必要最小限ではない前提の見積もりがされているかもしれません。

また、畳などの修繕方法が複数ある場合、一般的に入居者が負担すべきは、安い方法(畳の場合は裏返し・表替えなど)で補修した場合にかかる費用で、畳を新調する費用まで負担する必要はありません。

数量

高すぎる退去費の原因として請求書にある数量が大きくなっている可能性が考えられます。

部屋がタバコのヤニで部屋中が汚れてしまったような場合を除くと、原状回復工事は汚れた部分だけを最小単位で行うのが原則です。

例えば、6畳の部屋の畳1枚に重いものを落として穴をあけてしまった場合、入居者が負担しなければいけないのは1枚分の補修費用のみです。
他の5枚と色合いが違ってしまうからといった理由で6枚分の補修費用を負担する必要はありません。

負担割合

入居していた期間中に減価償却された部分がきちんと割引かれていることを確認してください。

ただし、フローリングの部分補修をする場合など、補修前後でフローリングの価値が変わらないため、居住年数分の割引がなく、部分補修にかかる費用は原則全額入居者負担とされているものもあるため注意が必要です。

退去費用が払えない場合はどうしたらいい?

退去費用が払えない場合はどうしたらいい?

退去費が払えない場合は、『お金を借りて支払う』もしくは『分割払いにしてもらう』などの対処法があります。

お金を借りる方法には、家族や友人、知人に借りる以外に、カードローン、自治体の貸付制度を利用する方法などがあります。

分割払いは、全ての不動産会社や保証会社で可能な方法ではありませんが、認められる場合も多いため、分割であれば支払うという意思表示をして、相談してみると良いでしょう。

退去費用を払うお金がないからといって放置していると、管理会社や保証会社から連帯保証人に連絡が行き、最悪の場合裁判になって給与などを差し押さえられる可能性もあるため、絶対に放置しないでください。

高すぎる退去費を請求されたから払わないといった理由も認められないため、退去費に納得できない場合は、減額交渉をしたり、悪質な場合は弁護士に相談したりするようにしましょう。

まとめ

退去費用の金額は、退去時の部屋の状況やその原因によって大きく変わります。

よくあるトラブル事例や『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を理解していることも交渉の成功確率を高めます

入居前からあった傷や汚れは写真に撮っておく、傷や汚れがつかないよう予防策を講じるなどの対策ができていれば、高額な退去費用を支払わなければならなくなる可能性は極めて低くなるはずです。

もし今後の引っ越しで高額な退去費用を請求された場合は、本記事で紹介した方法を参考に、退去費用の減額交渉にチャレンジしてみてください。

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